海外ドラマや小説の台詞などでこなれた感じの英会話を見聞きしていると、文のはじめに “you know” “kind of” “well” といったつなぎ言葉がくることがあります。これらの言葉にはいったいどのような意味があるのでしょうか。ここではそういった、英語でのつなぎの言葉 (discourse marker) の役割と、すぐに使える頻出のつなぎ言葉を紹介します。
つなぎの言葉 discourse marker とは
discourse marker (談話標識) とは、会話の流れや構造を制御するはたらきをもった語やフレーズのことを指します。日本語の会話で使われる「ええと」とか「じゃあ」「つまり」といった言葉に近いでしょう。おおまかに言って、話題を明確にしたり、その話題についてどういった切り口で話そうとしているか示したり、話者の態度を示したりするためなどに用いられます。discourse marker には “because” のような単純な接続詞から、冒頭に挙げたような “you know” のようなそれ自体にはあまり意味のないフレーズなど様々な種類のものが含まれます。
Practical English Usage によると、discourse marker によって次のようなことを表現できます。斜体は具体例です。こうして眺めてみると、日本語の会話でもよく使う言葉が並んでいますね。英語でも、こういったつなぎ言葉は日常会話からフォーマルなスピーチまで幅広く使われています。
- ‘What are we talking about?’ (何について話しているか)
- speaking of (…について言えば)
- first of all (まず第一に)
- by the way (ところで)
- all right (大丈夫/構わない)
- ‘What are we doing?’ (その話題について、どんな議論を展開しているか)
- in general (一般的に)
- in spite of that (それにもかかわらず)
- on the contrary (それどころか)
- after all (結局のところ)
- I mean (つまり/というか)
- attitude (話者の姿勢、態度、心構え)
- honestly (正直なところ)
- in other words (言い換えれば)
- I guess (…じゃないかな)
- kind(sort) of (なんか/そんな感じ)
- anyway (とにかく/いずれにせよ)
- actually (実際は/実のところは)
- you know (ほら/ねえ)
- well (ええと)
今日から使える 代表的な discourse marker
では、具体的にはどういった discourse marker があるのでしょうか。知っていると便利そうなものをいくつか見ていきましょう。
kind of / sort of
“kind of” や “sort of” は、話者が言おうとしている事柄にあいまいさを残したり、和らげたりする際に使われます。文脈によって「なんか」「ちょっと」「そんな感じ」という風に日本語訳され、意味をぼやけさせる働きをします。
- This place is kind of boring. (ここはちょっと退屈だよ)
- I’ve changed my mind, sort of. (気が変わったんだ、そんな感じ)
you know
“you know” は会話の相手が知っているであろうこと、共感してくれるであろうことを期待して発言する際に用いられます。また、このフレーズを発話することで次の発話まで少し考える時間が生まれます。日本語で言うと「ほら」「ねえ」といったところでしょうか。
Oh, and you know, Craig, we gotta pick up the kids. (あら、ねえ こんな時間、子供たちのお迎えが…)
(引用元: Better Call Saul S1E1 Uno)
Can we dial it down, you know, just a notch? (声を落とそうか、な、 ちょっとだけ)
(引用元: Better Call Saul S1E7 Bingo)
well
“well” によって、相手から投げかけられた疑問、質問について考えている、答えようとしていることを表現できます。”you know” と同じく、これによって次の発話まで少しの時間が生まれます。
‘When can you pay me back?’ ‘Well, you know, let me think, I don’t know, I mean, things are kind of tight just now,…’
(引用元: Practical English Usage, 4th edition)
こういった、返答までの合間の言葉としては他にも、上記のように “let me think”, “I don’t know”, “I mean”, “kind of” などがあります。
I mean
“I mean” は前述のように返答までの合間の言葉としてよく使われます。特に、自分の発言の意図を明確にしたり、間違いを訂正したりしようとする場合にこのフレーズを挟みます。
I don’t dislike him, Mother. I mean, I like him as a human being. I just can’t stand him as a man.
(引用元: Master of the Game)
I don’t want to break it. I mean, it’s already broken; they lost contact in 1997. But I don’t want to break it more.
(引用元: The Martian)
“mean” には他にも様々な用法があり、次の記事でまとめています。
いつ使うべきか
英語にかぎらず、接続詞は文の論理的なつながりを示すための重要な役割をはたす要素ですので、必要な場所では積極的に使っていきたいものです。しかしながら、一部の discourse marker は会話をスムーズに進めるうえで便利な半面、使いすぎるとただのノイズとなってしまい、かえってコミュニケーションの質を落とすことになりかねません。
特に “you know” をはじめ、”well” “like” “um” などは filler words や crutch words とも呼ばれ、考えながら話していたりまだ話し終わっていないことを相手に示すために使われるものですが、話される内容それ自体には情報として全く寄与しません。したがって、なるべくなら避けたほうが良いでしょう。例えば、なにか言おうとするたびに “you know” をつけたとして、意味は通るかもしれませんが特に利点もありません。むしろ、実際に聴く側の立場になってみると、かなり鬱陶しいということが実感できると思います。日本語でも、たとえば口を開くたびに「えっと」とか「えー」が入るスピーチはあまり長く聴いていたいものではありませんね。
会話のなかで自分の伝えたいメッセージをいかに適切に、効率よく相手に届けるか。そういった観点で適切に使っていきたいものです。
参考
- https://en.wikipedia.org/wiki/Discourse_marker
- https://en.wiktionary.org/wiki/crutch_word
- https://en.wikipedia.org/wiki/Filler_(linguistics)
- https://dictionary.cambridge.org/us/grammar/british-grammar/discourse-markers-so-right-okay
- https://dictionary.cambridge.org/us/grammar/british-grammar/you-know
- https://dictionary.cambridge.org/us/grammar/british-grammar/well
- https://dictionary.cambridge.org/us/grammar/british-grammar/mean#mean__50
- https://dictionary.cambridge.org/us/grammar/british-grammar/kind-of-and-sort-of
- Practical English Usage, 4th edition 284 discourse markers in writing; 301 discourse markers in speech; 592 sort of, kind of and type of