海外旅行などで英語ネイティブの会話についていけず、カフェやコンビニでちょっとした会話をするにも手間取ってしまうと、自分の周りにとても大きな言語の壁が立ちはだかっていることをありありと実感します。筆者は、アメリカの国際カンファレンスで全く英語が聞き取れず苦い思いをし、それを克服するために英語学習を始めました。それから数年かけていろいろ試行錯誤することで、ようやく以前よりは読み書きに困らず、(リスニングには若干不安が残るものの) ネイティブスピーカーの前でスピーチをできるようにもなり、TOEIC も800点を越えるレベルになりました。ここでは、それまでにやった学習の中から実力を身につけることに貢献したと判断できるものを紹介していきたいと思います。
頼りになる一冊を用意する
もしも今の自分のレベルが曖昧でどこから手をつけたらいいか分からないなら、英会話クラスの情報収集はちょっと置いておいて、いちど適当な中学英語の教科書を購入してぱらぱらめくってみることをおすすめします。そして10代の頃にやったはずの内容をよく思い出せないようなら、ここで中学英語をはじめから復習しておくとその後の学習がスムーズになります。
ちょっとぱらぱらめくるくらいなら図書館で借りてきてもいいのですが、こういった中学英語の教科書は長期的にも役に立つので、1冊は持っておくと便利です。筆者の場合、中学英語をひととおり復習したあともしばらくは、ちょっとした疑問が湧いたときに「くもんの中学英文法」で答え合わせをするのに重宝しました。この本は薄くて持ち運びに便利ですし、それでいて簡潔な説明で全体をしっかり網羅しています。
より網羅的なものとしては「総合英語Forest」や「総合英語Evergreen」のほうが高校英語の範囲もカバーしています。著者は長年「総合英語Forest」を愛用していますが、現在は残念ながら販売が終了しています。 Forest 後に発売された「総合英語Evergreen」は出版社は異なるものの、作者陣が Forest とほぼ同じで、構成も類似しています。
参考までに、中学3年分の英文法については次の記事でアウトラインをまとめています。
中学英文法を復習する
いざ中学英語をやり直す必要を感じたとして、こういった “教科書” をはじめから終わりまで順に読んでいくのは味気なくてつらいものです。忙しい社会人が限られた時間で文法について学び直すには、ぱっと斜めに読んでも頭に入ってくる直感的な解説のほうがありがたいのではないでしょうか。新しく始めるゲームのチュートリアルと同じです。筆者の場合、とにかく基本をわかりやすく押さえていそうな本をさがして、まずは「英文法のトリセツ」シリーズを順に読んでいきました。説明が口語体でかなり冗長ですが、ライトノベルのようにスイスイ読めるのでスキマ時間にもうってつけです。
とはいえ、いかにわかりやすい説明でも、読むだけですべてを完璧に覚えるのは難しいでしょう。ここでの第一の目的は、まず中学英語の範囲で全体像をつかむことです。ひととおり把握して、あとで読み返したときにすぐ思い出せるくらいになっておけるといいですね。文法を身につけて実際に使えるようになるには、文字通り「使う」必要があります。英作文や音読などを繰り返して、英語を使う練習をするのです。
瞬間英作文で、「知っている」英語を「使える」ようになる
本を読むことで「中学英語」の全体像をなんとなくつかむことはできます。が、それでは実際に文章を書いてみましょうと言われると、本当に単純な文すら咄嗟には作れないことに驚きます。勉強したうえで「知っている」を「使える」状態までもっていくには実践が必要なのです。サッカーのルールを知っていたとしても、ボールを思いのままに操るためには練習しなければなりません。英語習得にもそれと同じことが言えます。こういった実践にうってつけなのが、ドリル形式の教材です。
森沢洋介の「瞬間英作文」シリーズでは、簡単な日本語を数秒で英語に翻訳する練習をくりかえすことで、英語を使うための「筋力」を鍛えます。この本でトレーニングを続けたことで、英作文をはじめとした筆者の英語力のベースはかなり上がりました。意外かもしれませんが、英文を即座に組み立てられるようになることで、間接的に読解の速度や精度も向上します。さまざまな文型の作文をすることで、教科書で学習した内容の復習にもなります。
付属のCDの音声を使うと、各問題の日本語と英訳がちょうどいい間隔で交互に再生されます。日本語の文の後に無音状態が数秒続いてから答えの英文が読み上げられるのです。これを使えば、本がなくても電車で移動しながら英作文の練習と答え合わせができます。
「どんどん…」は初級レベルで、例文が文型ごとに分かれているので比較的やさしい内容になっています。ちょっと考えても文が思い浮かばないうちは、さっさと答えを見てしまって文法の理解を深めることに徹しましょう。少し慣れてきたら、例文が文型ごとに分かれていない「スラスラ…」のシャッフルトレーニングでさらに瞬発力を鍛えましょう。
音読/シャドウイング/リピーティングでリスニング力を上げる
シャドウイングとは普通のスピードで話す英語の話者に少し (1, 2語) 遅れて同じ内容を真似して話す練習法です。輪唱に似ていますね。リピーティングは、英語話者がセンテンスごとに休止を入れるので、その休止の間に直前のセンテンスをくりかえす、という練習法です。個人的には、リピーティングをくりかえすことでリスニングの精度が1段階上がった実感があります。音読、シャドウイング、リピーティングのうち、リピーティングは特に難しいです。シャドウイングの1,2語ならまだしも、ひとつのセンテンスをまるごと繰り返さないといけないからです。
単なるオウム返しなのにリピーティングがとても難しいのは、読解力と英作文力の両方を求められるためです。リピーティングの上達には、記憶だけに頼らず、音声で聴いた文の意味をイメージしつつ、それを頼りに文を自力で再構成するスキルが欠かせません。イメージから文の再構成ができれば、たとえ原文の細かい記憶が落ちてしまっても、正しい文法で作文する過程で情報の補完ができるからです。そういうわけで、リピーティングには話の内容をイメージできることと、それを瞬間英作文できることが求められます。逆説的に見れば、リピーティングが上達することで、発音だけでなくリスニングでの理解力の向上も期待できるのです。
オンライン英会話で自分のレベルを知る
十分な基礎ができていない状態でいきなり英会話クラスへ飛び込んでしまうと、手も足も出ずに挫折感だけが残るという結果になってしまいがちです。とはいえ、いつまでも孤独な練習ばかり続けていると、自分が今どれくらい力をつけたのか実感しづらいものです。自分の現在地を知るには、何らかのフィードバックを得る必要があります。
もし身近に英語話者とのコミュニケーションをとる機会がないような場合には、月に何度かオンライン英会話のレッスンを受けてみるという手があります。いくつかのサービスでは月に数回だけレッスンを受ける人のためのプランが用意されています。例えば、ECCオンラインレッスンでは、月額970円で2回レッスンを受けられます。
しっかりと会話のトレーニングをするつもりでない限り、無理に継続して上達しようとするよりも、これまで習得した内容の腕試しができればいいくらいの期待感で挑むのが個人的にはおすすめです。逆に、リスニング力の強化などを目的として日常的に英会話レッスンを行なう場合は、より安価で様々な市販教材が使えるDMM英会話がおすすめです。DMM英会話の有料会員になると iKnow! も無料で使うことができ、語彙の強化にも役立ちます。
無理のない方法で語彙力をつける
前述の瞬間英作文シリーズや音読パッケージシリーズはかなり限られた語彙で作成されていますので、ボキャビルという意味での効果はあまり期待はできません。英語の文章を理解するには文法の他に、その文章で使われている語彙を知っている必要があります。とはいえ、膨大な量の単語をひとつずつ機械的に暗記していくという方法ではなかなか継続がむずかしいのも事実です。英単語はストーリーやイメージと一緒に覚えるほうが身につきやすいので、まずはDUOのような例文を通して覚えるタイプの単語帳でなるべく語彙を広げましょう。本書の記載によれば、これだけで6000語程度の語彙レベルに達するといいます。
もしTOEICを受験することを考えているなら、せっかくなのでTOEICで頻出する単語を集中的に覚えるのもいいでしょう。英単語をチャンツで覚えるキクタンシリーズにはTOEICで使われている単語に特化したものがあります。TOEIC 600 や 800 などスコアを目安としてレベル分けされているので、自分の今のレベルにあわせて習得できます。
児童文学などの比較的やさしい洋書を選んで読破してみるのも効果的です。1冊を読み終える頃には辞書を引く回数が減っていることを実感できるはずです。最近は Kindle などの電子書籍を使えば、標準で付属している辞書機能でかなり簡単に意味を調べることができるので手間も少ないうえ場所も取りません。読書には、語彙を増やす以外にも読解力を強化する効果が期待できますし、なによりストーリーがあるので継続しやすいというメリットがあります。
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TOEIC 模試で試験問題に慣れる
TOEICの受験を考えているなら、あらかじめ模試を通して問題の形式に慣れておき、本番で本来の英語力をじゅうぶんに発揮できるようにしておくと良いでしょう。TOEICの出題形式は2016年5月から新形式へ移行し、それまでと少し変わっています。慣れるという意味では、あまりに古い模試は使わない方がいいでしょう。
模試には解答のためのマークシートが付属していますので、本番に備えて使っておくとよいでしょう。学習とはあまり関係がないですが、TOEIC の試験では時間が足りなくなりがちですので、マークシート専用の太いシャープペンシルを使い効率良く塗り潰せる状態で挑むのがおすすめです。