海外ドラマ Breaking Bad のスピンオフ作品である Better Call Saul (ベターコールソウル) シーズン1エピソード4 (Hero) に登場するフレーズの意味と使い方について解説します。各シーンの時間は Netflix での再生時間です。
That’s what I’m talking about.
01:12 頃。Jimmy がもう一人の男に次の店へ遊びにいくかと聞くと「もちろん行こう」となった。そんな流れでの一言。
That’s what I’m talking about.
字幕では「そうこなくっちゃ」となっています。Wiktionary によると、”that” に対する熱狂的な支持の表明に使われるフレーズとのことです。文脈によって「だよなー」「その通り」「そういうこと」といった日本語にも対応しそうです。
S’all good.
01:31 頃。男が Jimmy に名前を聞いて Jimmy が答えたのがこの台詞。
S’all good, man.
これが彼の Saul Goodman という名前の由来なんでしょうか? “S’all good” は “It’s all good.” の短縮形だそうです。Urban Dictionary は、こういった口語独特のフレーズを調べる際に重宝します。ちなみに本編での日本語字幕では「”すべてよし” だ」となっています。
That is … yikes!
29:34 頃。Howard Hamlin がロゴの色を “Hamlindigo” と名づけていることを耳にして Jimmy が言った一言。
Holy crap, you seriously named a color Hamlindigo? That is … yikes!
Yikes は唐突な精神的ショックや、不愉快な/良くない状況を表現するスラングだそうです。また、若干こっけいさを含めたいときに使われることがあるようです。Yikes で画像検索をするとそういったニュアンスが視覚的に感じられるのではないかと思います。
この文脈だと、ある色に自分の名前をつけるという Howard のナルシスティックな言動に対する嘲笑と不快感の入り交じった「うげっ」という感情を表現しているのではないでしょうか。日本語字幕では「それはイタいね」となっていました。なるほど。
The worm has turned.
41:32 頃。弁護士としての仕事が入りはじめたことを Chuck に報告する Jimmy の台詞。
The worm has turned.
“the worm has turned” は、突然、かつてしいたげられていた者が成功をおさめることや、不当な扱いを容認しなくなることを表現するフレーズです。ミミズやいも虫のような小さな生き物 (“the worm”) が、これまで自分をしいたげてきた強い生き物にいきなり反旗を翻すイメージでしょうか。
ちなみに著者は最初にこのフレーズをみたとき、毛虫が立派な蝶に成長する瞬間を想像していたのですが、全然違いましたね。
I knew you had it in you.
こちらも仕事の依頼が来はじめた Jimmy に Chuck が言った一言。Cambridge Dictionary によると “have it in you” で[(あなたが)特定の能力を保持している」といった意味になります。ここでは「おまえならやれると分かっていたよ」というところでしょうか。
what-do-you-call-it
01:57 頃。Jimmy と一緒にいる男が路上に落ちている財布を見つけ、それを自分のだと言い出す場面です。
Mine. Hey, possession’s like four-tenths of the what-do-you-call-it bro.
“what-you-may-call-it” と同様、「なんとかかんとか」みたいなはっきりと名前を言えないときのフレーズです。おそらくこの場面で男は、 “Possession is nine-tenths of the law” (所有は法の九割) という、完全な所有権がなくても現に所有している人が他の人よりもはるかに強い権利を持つ、という意味のフレーズを用いて、自分のものにすることを正当化しようとしているのでしょう。うろ覚えなのか four-tenths と言ってしまっていますが、それだと4割なのでちょっと足りませんね。
その他のフレーズ
- 14:14 頃: “Well, I believe I did more than what you asked of me …so that would make us square, yes?”
- ここでの “square” はビジネス的な文脈で、互いに対等であるとか、貸し借りがないことを意味します。
- 17:57 頃: “Upon this rock, I will build my church.”
- マタイの福音書からの引用でイエスがペテロに言った言葉。
- 26:00 頃: “How pissed was he?”
- “piss” は (誰かを) 怒らせるという動詞の働きもします。受動態の “be pissed” で怒るという意味になります。
- 30:46 頃: “Jimmy. Wise up.”
- “wise up” で、「分かって」「馬鹿なことはやめて」「賢明になれ」といった意味。
- 43:26 頃: “Keep it up.”
- (その調子で) 頑張れ、という意味。
参考
- https://en.wiktionary.org/wiki/that%27s_what_I%27m_talking_about
- https://www.quora.com/Is-the-origin-of-Saul-Goodman-Its-all-good-man
- https://www.urbandictionary.com/define.php?term=s%27all%20good
- https://en.wiktionary.org/wiki/yikes
- https://grammarist.com/idiom/the-worm-has-turned/
- https://idioms.thefreedictionary.com/the+worm+has+turned
- https://dictionary.cambridge.org/dictionary/english/worm-turns
- https://dictionary.cambridge.org/dictionary/english/have-it-in-you
- https://www.dictionary.com/browse/what-do-you-call-it
- https://dictionary.cambridge.org/dictionary/english/square#cbed-1-1-3
- https://www.urbandictionary.com/define.php?term=wise%20up
- https://dictionary.cambridge.org/dictionary/english/wise-up
- https://en.wikipedia.org/wiki/Possession_is_nine-tenths_of_the_law