「そこ」「あそこ」といった意味で辞書に載っている there は日常会話の中にも頻発する単語です。一見単純なこの単語は会話の様々な局面で少しずつ違った意味で使われます。それぞれの用法を見ていきましょう。
there is …: ある物事がある文脈に初めて現れるとき
「…がある/いる」といった風に、ある物事や人物の存在について その文脈で初めて言及する ときには “There is …” や “There are …” のような there be
で始まる文が使われます。
- There is a piece of land which your father left for you. (あなたの父が遺した土地の一部)
- There are a lot of issues that we have to resolve. (解決しなければならないたくさんの課題がある)
- There are two children in the park. (その公園に2人の子供がいる)
there be
で注意したいのは、あくまで対象の物事が初めて話題に登場するときに使うということです。日本語にする場合は「…があるよ」「… がいるよ」といった風に訳されることになりますが、そこには、その物事がこれまでの文脈で触れられていなかったこという情報も暗に含まれています。逆に言えば、既に文脈に登場しているものについて言及するときにはこういった言い方はしないということに気をつけましょう。
文脈にまだ登場していない物事を指すということは、必然的に、”There is” に続く名詞には the や he/she などの代名詞、Alice のような固有名詞がつかないことになります。ただし、話者が 話題の変更を示す ために there is/are the ...
を使うことはあります。
- …And then there is the other problem we have to solve. (で、解決しないといけないもう一つの問題があるんだけど…)
There is/are の後には名詞だけでなく -ing のような分詞を続けることで状況を表現することもできます。
- There is a train coming. (電車が来てる)
- There are children swimming in the river. (川で泳いでる子供たちがいる)
過去形や疑問文でも there be
のかたちは使われます。
- There were a lot of people here before dusk. (夕暮れ前にはたくさん人がいた)
- Is there any problem? (何か問題はある?)
助動詞と組み合わせることもできます。
- There will be lots of people after dawn. (夜明け後には多くの人がいるだろう)
また、”There is” のようなbe動詞ではなく一般動詞 (自動詞) を使うケースもあります。
- Once upon a time there lived a princess. (むかしむかし王子様が…)
there someone do …: ほら、○○が…するよ
この場合の there は話し相手の 注意を引く 意味で用いられます。また、この there は here でも置き換えられます。「ほら、日が昇るよ」「ほら、バスが来るよ」といった感じです。
- There comes the bus. (バスがくるよ)
- Here comes the sun. (日が昇るよ)
- There she comes. (彼女がきたよ)
このかたちの文ではしばしば倒置が起こります。最初の2つの例では there/here に続く主語と動詞が入れ替わっていますね。ただし最後の例のように、 対象が代名詞のときは倒置が起こらない ことに注意しましょう。上の例では、対象が “the bus” の場合は There + S V
なのに対し、代名詞の she になると There + V S
のかたちになっています。
“to/at/in that place” としての there
There は「そこへ」「そこで」「そこに」のような “to/at/in that place” という意味でも使えます。前置詞も込みなので、この用法では there に前置詞はつきません。
- The new cafe was very good. I went there. (“I went to there” ではない)
will / must / might / used to との組合せ
There は will/must/might などの助動詞や used to と組み合わせて使うこともあります。
- Will there be many people on the last day of the event? (たくさん人がいる?)
- There is a subtle scent of perfume. There must have been somebody in this room. (この部屋に誰かいたに違いない)
- There used to be a lot of shops on this street, but almost of them closed a few years ago. (昔はお店がたくさんあったものだが…)
There must の代わりに there is sure / there is certain / there is bound to be といったかたちで確かさを表現することもできます。
- There is sure to be a flight to Miami tonight. (今夜マイアミ行きのフライトがあるはず)
there, there.: よしよし / まあまあ
“There, there.” は相手を落ち着かせたり、心配や悲しみを慰める意味で「よしよし」「まあまあ」と訳されます。