アクセントを意識できるようになることで、発音だけでなくリスニング力も向上します。この記事で紹介する「ストレス (強勢アクセント)」とはセンテンスの一部の単語や、単語の一部の音節を長く、はっきり、高いピッチで発話することです。単語を発音するときに間違った場所にストレスを置いてしまうと、聞き間違えられてしまったりします。また、適切なストレスの位置を知らないことで、ネイティブの話す英語をうまく聞き取れないこともあるでしょう。ここでは、なぜアクセントの違いでそういった不都合が生じるかという理由と、覚えておくと便利な基本的なアクセントのルールについて紹介します。
アクセントとストレス
アクセント (accent) とストレス (stress) は、しばしば同じ意味 (一部を強調する) で使われます。しかし、これらは文脈によっては区別されることもあります。たとえば、音の高低による強調の場合は pitch accent、発音される長さによる強調の場合は quantitative acccent と呼ばれるのに対し、これらの組み合わせによる強調は stress accent と呼ばれます。
英語でアクセントが重要な理由
なぜアクセントを間違うだけで会話に不都合が生じるのでしょうか。それは、通常の会話で単語を発音するとき、ストレスを置く場所以外の母音はあいまい母音 (schwa; シュワ) として発音されることになるため、それらを聴き分けるのは難しくなってしまうためです。そのため、例えば personal と personnel を例に取ると、うっかり personal と最後の音節を強調してしまうと、personel と解釈されてしまう可能性が出てきてしまいます。
では、新しい単語のアクセントはどのようにして知れば良いのでしょうか? 実はこれは辞書で調べることができます。試しに personal と personnel をそれぞれ辞書で引くと、次のような発音記号が載っているでしょう (Google で ‘personal meaning’ といったキーワードで調べてみても検索結果の先頭に表示されます)。
- personal: /ˈpəːs(ə)n(ə)l/
- personnel: /pəːsəˈnɛl/
この場合、発音記号に紛れているシングルクオート記号 (ˈ
) がストレスを置く音節の目印になります。
単語のどこにストレスを置くかの一般的なルール
では、新しい単語を見つけるたびに、辞書を引いてアクセントの確認もしなければならないのでしょうか。実は、例外は多くあるものの、品詞やスペルとストレスの位置にはいくつかの一般的なルールというか、法則性が存在します。これらのルールをあらかじめ覚えておくことは、今後の学習やコミュニケーションの効率化におおいに役立つでしょう。
名詞と動詞
基本的なルールとして、 名詞は最初の音節 に、 動詞の場合は2つ目の音節 にストレスを置くことが多いです。以下の例のうち produce / progress / record のように、同じスペルで名詞と動詞どちらの品詞も存在する単語で比較すると違いが顕著に表れます。
名詞 | 動詞 |
---|---|
garden | apply |
basket | include |
produce | produce |
progress | progress |
record | record |
接頭辞付きの動詞と名詞
通常、接頭辞付きの動詞は2つ目の音節にストレスを置きます。一方、接頭辞付きの名詞は通常最初の音節にストレスを置きます。over と under を接頭辞として使った単語で確認してみましょう。
- 動詞: oversleep, understand
- 名詞: oversight, undertaker
接尾辞 -ate/-tion のついた動詞と名詞
接尾辞 -ate のついた動詞 は最初の音節にストレスを置きます。一方、 接尾辞 -tion のついた名詞 はその接尾辞の直前の音節にストレスを置きます。
-ate | -tion |
---|---|
activate | activation |
calculate | calculation |
locate | location |
接尾辞にストレスを置く単語
通常、接頭辞や接尾辞などの接辞にはストレスは置きません。しかし次の接尾辞を持つ単語の場合は、その接尾辞にストレスを置きます: -ee, -ette, -ique, -ese, -eer, -ain。
接尾辞 | 例 |
---|---|
-ee | interviewee, employee |
-ette | cassette, cigarette |
-ique | technique, unique |
-ese | Japanese, Taiwanese |
-eer | engineer, pioneer |
-ain | explain, ascertain |
XXself
XXself, XXselves といった 接尾辞 -self -selves のついた代名詞は、最後の音節にストレスを置きます。
- myself
- yourself
- himself
- herself
- itself
- themselves
- ourselves
フレーズのどこにストレスを置くかの一般的なルール
アクセントは単語の中 (シラブル) だけでなく、フレーズや文の中にもあります。まずフレーズについて見ていきましょう。
複合名詞
複合名詞では最初の語にストレスを置きます。ストレスを置く語は、大きな声/長く/高い声で発音します。
- credit card
- keyboard
- book shelf
人や場所の名前は、常に最後の語にストレスを置きます。
- New York
- Tom Cruise
形容詞 + 名詞
形容詞で名詞を修飾する場合、一般的には名詞にストレスを置きます。
- nice day
- good job
- green eyes
ただし、形容詞が本来の意味として使われていないものについては、形容詞のほうにストレスを置くことがあります。
- high school
- green card
- Bluetooth
Bluetooth の tooth にストレスを置くと、文字通り青い歯について話していることになってしまいそうですね。
句動詞
句動詞では最後の語にストレスを置きます。
- pick up
- work out
- drop out
- back up
一方、句動詞を名詞として使う場合は、最初の語にストレスを置きます。
- workout
- leftover
- dropout
- backup
文のどこにストレスを置くかの一般的なルール
次は文です。原則的には、content words と呼ばれる文の重要な意味の語にストレスを置くことになります。Content words は、ある文の意味を理解するのに欠かせない語です。あるいは、ある疑問があるときに検索エンジンに入力するような語のことです。例えば “How to prevent diabetes?” (糖尿病を予防するには?) なら prevent と diabetes が content words に該当するでしょう。一般的に、通常は次のような語にストレスを置くことになります。
- be/do などを除いた意味のある動詞
- 名詞にはストレスを置く
- 形容詞にもストレスを置くが、形容詞+名詞では名詞によりストレスを置く
Content words に対して function words と呼ばれる次のような語には通常ストレスを置きません。そのような語は短かくソフトに発音し、母音はあいまいなシュワ (schwa; 発音記号は ə
) になります。
- 代名詞: he, you, they, her…
- 前置詞: in, for, with…
- 接続詞: and, but, so…
- 助動詞類: is, was, do, does, have, can, should… (否定文を除く)
- 冠詞: a, an, the…
- 不定代名詞: some, any, none…
ただし、助動詞については否定文ではストレスを置きます。また、function words が語尾に置かれるときや意図的に強調したいときなどにもストレスを置くことがあります。
Mastering the American ACCENT
アクセントをマスターするには、実際の例を聴きながら発話する練習をするのが効果的です。Mastering the American ACCENT は、本書で紹介したようなアクセントのルールをていねいに解説しています。付属のオーディオがCDではなくダウンロードできるかたちで提供されているため、音楽プレーヤーに取り込む必要もなく使いやすいです。このオーディオコンテンツでは本書全体がクリアな女性の声で朗読されます。個人的な感想になりますが、聴き取りやすく、オーディオブックのようにも使えますのでおすすめです。
発音について
発音記号の読み方や、単語のスペルから発音を推測する方法についても以下の記事で解説しています。